野球中継中断事件

2001年に起こった“番組史上最大の悪夢”と評される『野球中継中断事件』をご紹介。
(※一部ネタバレ有)

事件となった回について

事件が起こったのは、2001年10月4日に放送された「'01秋の特別編」内でのこと。

この回は、全ての主人公を女性キャストで統一するという番組初の試みが行われたほか、
この3ヶ月前に封切られたばかりのジブリ映画『千と千尋の神隠し』にて、
主人公・千尋の声を演じた柊瑠美が出演する事もあり、大きな話題を集めた回でした。

事件の始まり

『'01秋の特別編』は、予定通り21時から放送が開始されました。

そのまま何事もなく、第1話「ドラマティックシンドローム」(主演:優香)の放送を終え、
続く第2話「仇討ちショー」(主演:中谷美紀)に突入します。
そして、開始から約11分でAパートが終了し、CMへ移行。

しかし、CMが明けた9時46分……突如TVに異変が映し出されました。

事件発生

CM明けに映し出されたのは、プロ野球のナイター中継。
当初はドラマのワンシーンだと思って見ていた視聴者も多かったようですが、
お断りのテロップ表示により、そうではなかった事が明かされます。

実はその頃、番組の真裏では『ヤクルト×阪神戦』が行われていたのですが、
間もなくヤクルトのリーグ優勝が決まるかもしれないという超重要な局面だったのです。

しかも、試合は"9回表の同点"という白熱した展開を見せており、
いつ勝敗が決まってもおかしくない絶妙な状況となっていました。

また当時のフジテレビは、ヤクルトと業務提携を結ぶ強固な間柄にあっただけでなく、
この3日前に長嶋茂雄監督の最終試合であった『阪神×巨人戦』にて、
まだ8回というタイミングでありながら、延長する事なく中継を打ち切ったため、
視聴者から約900件の抗議を受ける失態を引き起こしていました。

そうした状況下に置かれていたフジとしては、
何としても優勝シーンの放送を逃すわけにはいかなかったのです。

泥沼の展開へ

とはいえ、試合展開から見て早期の決着となるのはほぼ確実。
フジも視聴者も、しばらく待てばすぐに番組が再開するだろうと踏んでいました。

ところが、ヤクルトが1点も入れられないまま9回表が終了。
続く9回裏でも阪神が得点できず、試合は同点のまま延長線へと突入してしまったのです。

10回の表裏も同点に終わってしまい、試合は11回戦へ。
延長に延長を重ねる中、既に中継時間は1時間を超えてしまっていました。

そして、中継開始から85分が経過した11時10分に、ようやく試合が終了します。
その結果は……12回まで進んだ末、引き分け

中継を決めたフジテレビだけでなく、視聴者にとっても最悪の結末となりました。

中継終了、そして……

23時11分頃、何事もなかったかのように「仇討ちショー」のBパートをそのまま放送。
秋の特別編が終了したのは歴代で最も遅い終了となる深夜0時49分頃に。
当然終了後にフジテレビへの苦情が殺到。当時2ちゃんねる等でもこの件を巡ってかなりの騒ぎに。
しかし、まだ悪夢は終わりません。リアルタイムで見れなかった人々が録画を見始める頃がやってくるのです。

事件その後

『中継があったなんて聞いていない』『録画が途中で終わっている』そんな苦情が翌日の朝にかけてフジに殺到。
その数、苦情電話だけでもおよそ1万1500件。メール等も合わせるとかなりの数に昇ったことでしょう。
さらに視聴率は中断前の14.7%から13.1%と逆に下がってしまったことが判明。

最終的に苦情電話は1万5000件にまで増え、フジテレビは関東のみで12月30日の昼3時に再放送を決定しました。
しかし、関東のみでの放送だったため、見れない地域が大多数、
必ずしもファンにとって満足の行く処置とはなりませんでした。

『10月4日放送「世にも妙な物語」放送中断について』

10月4日、夜9時から放送しておりました「世にも妙な物語」を一時中断して、
プロ野球中継「ヤクルト×阪神戦」を放送致しました。
「世にも妙な物語」をお楽しみいただいていた視聴者の方には大変にご迷惑をおかけしました。
「世にも妙な物語」の再放送につきまして、編成の担当者からのコメントが来ておりますのでご覧ください。

『10月4日のプロ野球・ヤクルト×阪神戦につきましては、ヤクルトの優勝決定シーンを放送することが、
今シーズンのプロ野球・ペナントレースをしめくくる上で重要と考え、
『世にも妙な物語』を中断して放送いたしました。
「世にも妙な物語」につきましては、現在、少なくとも関東地方で放送しているフジテレビでは、
必ず再放送を行うべく放送日時の検討を行っていますので、何卒ご理解ください』

(2001年10月5日 デジパブ「ほっとライン」より)

『番組変更に関する皆様からのご意見』

10月4日(木)21時からの「世にも妙な物語」の放送中に
ヤクルトの野球中継が挿入された件について、視聴者の方から寄せられたご意見

出張で見られないため、ビデオ録画しておいた「世にも妙な物語」が、野球で中断され、途中で切れていた。
確かにヤクルトの優勝が決まるかもしれない試合なので、仕方はないと思うが、中継のタイミングが最悪だ。
試合展開からして、「仇討ちショー」が終わってからでもよかったのでは?
また、野球中継の挿入を検討しているのなら、新聞やweb上で知らせておいてほしい。
いきなり決まったわけじゃあるまいし…フジテレビさんは、変更後の対策はスピーディーですが、
事前の対策はできてないと思います。
(男性・会社員・20代)

いつも楽しく番組を拝見してます。でも、私は仕事がら夜遅くリアルタイムで見ることができず、
ビデオ録画が多いので4日に「世にも妙な物語」をセットして仕事に行きました。
楽しみに帰ってきてビデオを回したら…なんと野球の放送が(ヤクルト)入っていて
途中までしか録画されてませんでした。
新聞を確認しましたがそんなことは一つも書いてないではありませんか。どういう事なのでしょうか?
この間の米国テロのように突如におこった事件なら話はわかります。
そのことは前もって新聞に載せておくべきことではないでしょうか?非常に残念です…。
(男性・会社員・30代)

他にも多数のご意見をいただきました。

フジテレビでは、その時その時一番熱いものに、柔軟に対応し放送するという姿勢でおります。
ただ、新聞のラ・テ欄での表示や、放送中の番組内でお知らせのテロップを流すなどの配慮が足らず、
皆様にご迷惑をおかけ致しましたことを深くお詫び申し上げます。

皆様からいただいたご意見を教訓に、
今後急な番組変更などが起きる際には、より迅速な対応で視聴者の方々にご理解いただけるよう、
努力していきたいと思っております。これからもよろしくお願いいたします。

(2001年10月10日 デジパブ「ほっとライン」より)

『「世にも妙な物語」再放送のお知らせ』

去る10月4日放送の『世にも妙な物語 秋の特別編』が
プロ野球・ヤクルト×阪神戦の緊急中継により中断され、番組をご覧の皆様には大変ご迷惑をおかけいたしました。
フジテレビでは12月30日 (日) 午後3時から『世にも妙な物語 秋の特別編』を再放送致しますので、
ここにお知らせいたします。

尚、フジテレビ以外の放送局をご覧の皆様は、各放送局にお問い合わせくださいますようお願い致します。

(2001年12月4日 デジパブ「ほっとライン」より)

フジはその2日後に「美容エステ探偵~悪魔のフィアンセ~」の再放送をまたも打ち切り、横浜×ヤクルト戦を放送。
今度は何とか優勝風景を放送する事が出来たものの、謎解き寸前に打ち切ったため苦情電話が殺到。
フジテレビにとって2001年の10月は野球中継に泣かされた月となりました。

奇妙な出来事

当時ネットで騒がれた奇妙な出来事があります。
それは第1話『ドラマティックシンドローム』のオチが、“野球中継の延長で見たいドラマに間に合った”という物で、
さらに劇中での試合は『ヤクルト×巨人戦』と、ヤクルト戦を的中。
事件を予測していたのではないかと言う、奇妙な物語を繰り広げてくれた第1話はしばらく語り草となったのでした。